愛好家たちの声
#19
北風 壮一
BAR BOOZER 経営
バーテンダー
きたかぜそういち。2004年にBAR BOOZERを創業。そのかたわら、ヨガやボクシングフィットネスも手がける。BAR BOOZER Open 19:00、Close 3:00、Tel 03-3583-7712、Instagram:@bar.boozer
六本木でBAR「BOOZER」を経営するバーテンダーの北風さんは、収集価値のあるものへの目利きでそのジャンルは多岐にわたる。近頃盛り上がりを見せているジャパニーズウィスキーはもちろん、多種多様なお酒、デニム、時計に関しても買い時に敏感だ。20年以上続く時計趣味だが、手入れには関心がなかった北風さんにピュリファイタイムを試してもらった。
僕は時計以外にもデニムやウィスキーとか、歴史がある、普遍的なものを集めるのが好きです。特に、大量生産以前の、人の手が入ってるものに惹かれる。そのなかで、スカジャンは唯一ダメでしたけど。実際に着れたり使えたりしないとダメだから、50年くらい前のものだと刺繍も繊細で普段使いにはしづらかったんです。バイクも世界だと、盆栽バイクっていう呼び方があるんですが、貴重なパーツとかを買い集めて、組み上げたら乗らずにそのままにしちゃうこと。そういう普段使いできないものからは、僕はだんだん遠ざかってしまうんですよね。
僕は高校の頃からバーテンダーをしていて、ホテルのバーで働くようになるんですが、そこで目にするお客さんの時計にとにかく興味があって。それ以前も時計は買っていたけれど、当時バーに来るような男性が身につけているものは、やっぱりカッコいいんですよ。そういう大人に憧れてこの業界に入ったんですが、毎日お客さんの時計を見ている内につけてる時計で性格がわかるようになってきたりしましたね(笑)。
若いころってろくに話もできないじゃないですか。お金持ちや社会的地位の高いお客様相手にお酒だけだと間が持たないし、もっと深く入るには時計の話だろうと思ったのも理由の一つですね。その当時は腕時計していない人なんていませんでしたから。ホテルのバーって時計が置いてないんです。お客さんが時間を気にしないでくつろぐための配慮なんですが、働いている側は誰かが時間を把握する必要があって、現場のチーフという立場にだけそれが許される。今みたいに仕事の合間にスマホを見たりなんてあり得ない時代、チーフになって初めて時計をつけられる分で、そうなったらどんな時計を買おうかなと、考えてるのが楽しかったですね。
はい(笑)。最初に買ったものは、ブライトリングのエアロスペースで、デジタルのものでした。バーで使うから、シェイクに耐えられるかどうかが決め手でしたね。今でも、ボクシングとかヨガとか、ジムでの仕事をするときはそれをつけていきます。この時計もカッコいいお客さんがつけていて、自分に合ってるかもと思って買いました。ただ、それを買ったら機械式時計が欲しくなって、そのあとにさらに5桁時代のサブマリーナーを買うという(笑)。でも、よくつけてたのはエアロスペースかな。薄くてチタン製で軽いし、バイクに乗る時もいけるのは他にないです。
あるときに、今ではもう作ってないものの価値が凄まじいということに気づいたからですね。仕事柄、ウィスキーやジンは日々仕入れて消費していくわけなんですが、昔はマッカランとか山崎とか今やプレミア化しているものも普通に数千円で買えましたからね。しかも味が今よりいい。人の手が入っていることが感じられて、深みがあるというか。製造に機械が導入されてオートメーション化されたあとの均質化されたお酒とはやっぱり味わいが違うんですね。バーテンダーって、普通はお酒単体の味をそこまで見ないんです。それは、シェイクしてカクテルにしてお出しするのが前提だからなのですが、僕は割とそういう個別のお酒をチェックするのが好きで。いいお酒はラベルが切り替わったりするときに製法も変わったのかな?とか、アルコール度数が変わったりすると味が変わることに気づくようになり、質が落ちていたら前の世代のものを思い切って大量に買っています(笑)。ギムレットっていう有名なカクテルがあるんですけど、これはゴードンっていうジンで作るのが絶対においしいって思ってますが、昔のゴードンがやっぱり素晴らしいんです。すみません、時計の話からは逸れましたが(笑)、時計も現行よりヴィンテージがいいのは同じような理由ですね。
カクテルの定義ってものがあって、それは単体で飲んでも美味しくないものを混ぜて美味しくするということで、それが存在意義なんです。今は、そもそも高くて美味しいものを混ぜる方向になってますけどね。僕としては、先ほどお話した習性が染み付いているから、時計ももう作らなくなったよい世代のヴィンテージが出てきたときに買わないとと思っているうちに、たくさん増えました(笑)。
はい、そういうところに惹かれて買ったものばかりですね。最初に買ったヴィンテージは、70年に発売されたロレックスのサブマリーナー 5513。10年に前に買ったこの時計は一番好きかもしれない。仕事中でも一番つけてますが、シェイクをしても壊れないすごく頑丈な自動巻き時計です。使いすぎて、トライアングルの丸マークも取れてます(笑)。
時計は普段、水洗いくらいしかしてないですね。バイクをなるべく洗いたくない感じと似ていて、リアルな感じが好きなんです。ピカピカはそんなに好きじゃなくて、この時計たちもそうなんですけど、男臭いのが好きなんです。
おお、傷がなんかいい感じになりましたね!シルバーの色の雰囲気が、ピカピカはせずに艶が出た感じがする。肉眼で見ても、いいカメラで撮ったような、フィルターをかけた状態になってます。僕は、この年代のステンレスがすごく好き何です。ロレックスでも、5桁と4桁だと光り方が違くて、4桁の方が黒く鈍い光り方をするんです。それが際立って、男前になった感じがするね〜。ヴィンテージウォッチって、汚いのと味が紙一重ではありますからね。手元にあるもので、自分でケアをするのはいいことかもしれないです。