愛好家たちの声 #18 長谷川剛 | Purify Time(ピュリファイタイム)

愛好家たちの声

#18

コレで磨くことで
傷が整う感じがする

写真:長谷川剛さん

長谷川 剛
ライススタイルライター

メンズクラブやメンズエグゼクティブなど、長年男性ファッション誌業界で執筆活動を続ける。腕時計に限らず、自身で手入れや修理を手掛ける実践派の趣味人。

大戦〜70年代のものなど、ヴィンテージウォッチをこよなく愛する長谷川さん。長年ライター業を続ける傍ら幅広く趣味の世界にも没頭し、近年はファッションスタイルのイチアイテムとして集めだした時計ながら、「不動品を直す」という段階にまで行き着いた。手入れというより修理を長年続けてきた長谷川さんに、ピュリファイタイムを試していただいた。

古い懐中時計は
本当に磨きがすごい
時計の価値は磨きなのだと
思わされるほど

ちょっといきなり次元が違う話になってしまうんですが、僕は古い時計をバンバン手に入れているので、革靴を磨くような意味での手入れまでは手が回っていないんです。それは2週目の作業だと思っていて、まずは1週目にあたる手入れをしている。僕が集めている年代のものはプラ風防の個体が多くて、ほとんど文字盤が見えないような状態のものもある。そういうときは400番くらいの粗さからやすりをかけて、最後はコンパウンドで仕上げてっていうのが、現在僕がやっている手入れなんです。時計の他にもバイクなんかも好きで自分で修理するんですが、フロント部分にある透明なスクリーンもやすりがけでピカピカにしたりします。それが高じて、時計もやるようになった流れですね。

そう語る長谷川さんは、当初ファッション小物の
ひとつとして時計を購入。
最初に手にした50年代のブライトリングの
購入体験が、現在のようなスタイルの
きっかけとなったのだとか。
そう語る長谷川さんは、当初ファッション小物のひとつとして時計を購入。
最初に手にした50年代のブライトリングの購入体験が、
現在のようなスタイルのきっかけとなったのだとか。

僕はもともと古着が大好きで、メンズスタイルもいつも古着でまとめていました。これには時計がないと完成しないわけなので、当初は日本でヴィンテージウォッチを探していたんですが、高価すぎて手が出ずにいたところ、あるときにロンドンへの取材出張の話をもらったんです。ME(メンズエグゼクティブ)という雑誌の仕事で、当時はクラシコ・イタリア全盛期。複数のスタッフと現地に赴いて、ついに知り合いづてに時計ブローカーの人と会うことになったんです。彼は、日本で言うと東京から岩手くらいの距離のところからロンドンまで来てくれて、これは買わないわけにはいかないよなあ、まいったな、と思いつつも、当時のなけなしの知識で「ヴィーナスの178はある?」なんて、カッコつけて聞いたんですね。そしたらあるよ、って言って、50年代のブライトリングを出してきた。当時の値段で30万円くらいだったんですが、即決できずに悩んでいると「それ、(無料で)日本に持って帰っていいよなんて言い出すもんだから、僕もそこまで言うなら安心かなと思い切って購入しました」

しかし、帰国後に思わぬ事実を知ることに。

知人の指摘から裏蓋を開けてみたんですが、そこで発見したのはヴィーナスではなくまさかのバルジュー! 言っていたものと違ったわけなんですが、それは無知が故の買い物だったと受け入れました。時計は中身の機械を知らないと、買い物もできないんだと感じて勉強するようになったんです。

ファッションの一部として時計の世界に
入ったものの、この一件が大きく影響し
時計自体にのめり込むことに。
しかし食指が動くのは、メガブランドの
レアモデルなどではなく、
忘れ去られた名機のような存在だ。
ファッションの一部として時計の世界に入ったものの、
この一件が大きく影響し時計自体にのめり込むことに。
しかし食指が動くのは、メガブランドのレアモデルなどではなく、
忘れ去られた名機のような存在だ。

古い懐中時計なんかは、本当に磨きがすごいですよ。腕時計だとそういうのは数百万円クラスのものになってくるけれど、懐中時計はそこそこのものでも歯車の内側まで磨かれていますから。時計の価値は磨きだと思うほどです。そういうところから感銘を受けて、磨きっていいなと思うようになったのもあります。現在のやすりがけにつながるんです(笑)。

今回拝見したなかにも不動の状態から
自分で復活させた時計が含まれていた。
長谷川さんは外装のやすりがけにとどまらず、
機械までもいじってしまうようだ。
今回拝見したなかにも不動の状態から自分で復活させた時計が含まれていた。
長谷川さんは外装のやすりがけにとどまらず、機械までもいじってしまうようだ。

こっちのシーマは485という、シーマにとって最後の自動巻きムーブメントを積んでいます。ふたつ持っているんですが、傾向としてカムと爪のところが壊れやすい。ペラトン式が主流になっていた時代にあえての爪巻き上げ式を採用していて、この巻き上げの動きに僕のハートが揺れたんです。その後このキャリバーはなくなっていくんだけれど、今の時代から見るとすごく楽しめるものですね。こちらの黒いファーブル・ルーバ ツインパワーは、当時ダブルバレルの薄型ムーブメントとして割と打ち出していたもの。けれどこの個体はケースや針がありあわせのような感じで、文字盤だけがやたらキレイな状態なんです。ファーブル・ルーバでわざわざリダンはされていないだろうと思っていますが、謎の多い時計です。スイスの機械式時計の歴史はとんでもなく深い。当初の予想よりも深くて、僕が買っているようなヴィンテージは値段も手頃なだけにやめどきがわからないんです(笑)。

長谷川さんにとっては久しぶりの外装への
手入れとなるが、ピュリファイタイムの
使い心地には好反応を示した。
長谷川さんにとっては久しぶりの外装への手入れとなるが、
ピュリファイタイムの使い心地には好反応を示した。

傷が整う感じがします。使いやすくてとても便利ですね! 特に割と数を持っている金張りの時計にも使いやすい。金張りの磨きって本当に難しくて悩みだったんですが、金が剥げて布の方がピカピカになっちゃうことがあるんです。これなら安心して磨けますね。ケースのくすみが取れるような、顔色が明るくなるような意味でキレイになりました。表面の層を剥がすことなく、きちんとキレイにできる。磨き欲が充たされていきます(笑)。

これまで、クリーナーを使って手入れする
という方法は、ヴィンテージウォッチでは効果を
実感しづらくマッチしないと感じていたという。
しかし、傷の多い個体や金張りのものでこそ
ピュリファイタイムの効果を実感していた
ようだ。あくまで自然体で時計を楽しんでいる
からこそ、手入れに対する視点も独特で鋭い。
これまで、クリーナーを使って手入れするという方法は、
ヴィンテージウォッチでは効果を実感しづらくマッチしないと感じていたという。
しかし、傷の多い個体や金張りのものでこそピュリファイタイムの効果を
実感していたようだ。
あくまで自然体で時計を楽しんでいるからこそ、手入れに対する視点も独特で鋭い。

時計って今は金持ちのステータスアイテムのような側面がより高まっています。もちろんそれでもいいんだけれど、中古やヴィンテージでもっと手軽に楽しめるものであってもいい。時計って意外にいいじゃんと思えば、本格的、高価な時計に進んだり、やっぱりいらないと思ったりしてもいいと思うんです。僕は自分流の楽しみ方を続けていくと思いますが、まずは、最近磨きの心を忘れているので、ピュリファイタイムで自分の心を磨くところから始めようと思います(笑)。

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