愛好家たちの声
#12
前田 晃
カメラマン
まえだあきら・1973年生まれ。愛知県出身。25歳で独立しカメラマンとしての活動を開始。雑誌『LEON』などメンズファッションを中心に手掛け、ストリートやモードブランドの撮影も多数。
クルマや時計など男子の道具をこの上なく愛する前田 晃さん。長年ファッションカメラマンを続けるなかで養われた審美眼により、かなりの数を所有してきたという。手にしたものは使ってこそ、気に入るものかどうかは試してこそ、という信念を持つ彼は愛好品もとにかく使うことがモットー。手入れにそこまで頓着がない前田さんに、ピュリファイタイムを試してもらった。
僕は正直モノの手入れというのはほとんどしないんですよね。クルマも時計も大好きで、ゴルフもやりますが基本的に使ったら使いっぱなし。クルマは月に一度、洗車くらいはしますけれど。使ってできた時計の傷とかクルマの走行距離とかは全然気にならない性格ですね。
今でもなじみの時計店があって、そこの代表に言われるがまま買ってきたところがありますね。それで時計にのめり込んでいった感じです。時計は今となっては撮影の仕事でも多く扱いますが、実はそこの代表が「(うちの商品で)好きに撮っていいよ」と言われてやってみたのが初めなんです。IWCにブルネイの王様がオーダーした、サファイアケースの時計。もちろんワンオフなので世にはほとんど知られてないようなものです。ケースのシェイプを見ればどんな時計かわかるから、文字盤は見えてなくてよいので好きにやって、と言われたことは衝撃的でしたね。その後も色々撮影させてもらって、総額1億円を超えるような時計を3本、ハンバーガーのように重ねてみたりだとか、セオリー無視のかなり無茶な撮り方も喜んでくれて、そんな懐の深さのおかげで時計を撮影する楽しさを覚えましたね。
見て、触ったら所有してみたくなるんですよ。撮影用に借りてきたものでは批判はできないし、本当の魅力もわからない。なので、背伸びしてでも購入して使ってみるということ実践してきました。金無垢を買えなかったらまずはゴールドのコンビを手に入れて、とか目標をだんだん達成していくのが楽しかったですね。僕は業界でも珍しいタイプだと思います。
手元にあるのはこの仕事をしはじめたころに手に入れたものがほとんどですね。本当に気に入ったものしか残さない中で、10年以上持っているものが多いかな。いろいろと買ってきましたけど、MAXでも12、3本にとどまるように、あまり増やしすぎないようにしてました。さっきも言いましたけど、目標となる時計のために例えば3本売却して1本にしちゃうとか。今では過熱しているパテック フィリップのノーチラスも、合計で6本買ってきました。オーバーホール済のピカピカのプラチナモデルがしっくりこなくて、すぐに手放して同じプラチナのくすんだものを書い直したり(笑)。ノーチラスが大分メジャーになってきたころにはそれが嫌になって、僕の中でひとつの到達点となった5970という型番の永久カレンダーモデルを手に入れて。今となってはとても買えない値段になっていますが、そうなる前に着けられたのはよかったと思います。
ケアせずに買いっぱなしで、売るときも別にキレイにしない。クルマもそうなんですが、体感せずに良さを知らないことはもったいないでしょう。ポルシェは、エンジンが温まってから乗るのと広報車両を乗るのでは全く感覚が違います。買ったからには、ポテンシャルを試さないと意味がないんです。このデイトナは自分の性格をよく表してますね。ホワイトゴールド製なんですが、ここまで傷だらけにする人はいないと言われます(笑)。名古屋出身で自分の親の代に傷つくことを気にしている人がいなかった影響があるかもしれません。
傷の手触りがツルツルになった気がします。見た目にそこまで変化はないけれど、着けた感じもソフトになるというか。時計を磨くことが僕の習慣になるかはわからないけど、このクリーナーをどういう会社が作ったのかはすごく興味があります。僕の中で、身の回りで磨くものと言えばクルマくらいなので、その専用クリーナーやワックスを長年作っている老舗だと聞いて、なるほど、と。趣味の世界はその人の性格次第で楽しみ方が変わりますけど、例えばゴルフクラブを磨くのが好きな人もいるように、時計をキレイに手入れする時間を楽しむっていうのもアリなのかもしれませんね。