愛好家たちの声 #09 まつあみ靖 | Purify Time(ピュリファイタイム)

愛好家たちの声

#09

時計に手入れをする
時間をもつことで
自分が過ごしてきた
過去と向き合える

写真:まつあみ靖さん

まつあみ 靖
エディター/ライター

まつあみやすし・1963年生まれ。エディター/ライター。集英社入社後、1992年よりフリーに。著書に『Watch Concierge Maison Guide』など。あるときは、自身が主宰するMAZZAMiZMでミュージシャンとしても活動中。

時計のライターとして活躍する傍ら、ミュージシャンとしての活動も行うまつあみ靖さん。そんな彼の時計観は独特で、旅先で気の赴くまま出会うようにして購入したものが多いという。旅の記憶とともに愛でる時計たちに、今回はピュリファイタイムを試してもらった。

これまで疎かだった
時計の手入れが
集めてきた時計との
思い出を蘇らせる

まつあみさんは元々出版社で週刊誌、
芸能雑誌をエディターとして担当。
独立後に腕時計に興味を持ち始めたという。
しかも、そのきっかけは意外なものなのだそう。
まつあみさんは元々出版社で週刊誌、芸能雑誌をエディターとして担当。
独立後に腕時計に興味を持ち始めたという。
しかも、そのきっかけは意外なものなのだそう。

僕が時計の世界に興味を持つようになったのは、とある編集プロダクションの旅行に同行した台湾でのことです。仲間たちと、高級時計の偽物が売っているらしいからちょっと買ってみようぜ、という話になり、ホテルにアタッシェケースにたくさん時計を詰めてやってきた業者から手に入れました。今ではお恥ずかしい話ですが、その偽物もなかなかよくできているじゃん、ということでしばらく着けていて。偽物でこの出来なのだから本物はどんなだろうと気になりだして、いつか手に入れたいと思っていたところ、本物との出会いは香港にありました。偽物ばかりしているわけにもいかないなと思いだしていた、91年ごろのことですね。

興味本位で購入した偽物の高級時計からして、
出会ったきっかけは旅。
その後も思い出に残る時計たちを世界中で
手にしたという。
興味本位で購入した偽物の高級時計からして、出会ったきっかけは旅。
その後も思い出に残る時計たちを世界中で手にしたという。

初めてのロレックスは、香港の屋台街で手に入れました。時計を売っているお店が数軒あったものの、街自体は玉石混交。洋服や食品も売られているなか、当時4万円でオイスター デイトを購入したんです。時計のこともよくわかっていなかったし、日付の合わせ方すら知らないという状態でしたが、一応本物らしい機械式時計を所有できたわけです。(その後、しかるべきところでオーバーホールに出したことで、本物と確信できたそう)こっちのブライトリングはプラハで、パネライは2002年ごろに、イタリア・ミラノで購入しました。イタリアものは現地で、ということで、バーゼルワールドの取材後にむりやり仕事を作って寄ったのを覚えています(笑)。

これらの時計はどれもが旅での偶然の出会い
によって手にしたものだそう。
欲しいから買い物に出かけて購入する、
という一般的な消費行動とは
少しかけ離れている。
これらの時計はどれもが旅での偶然の出会いによって手にしたものだそう。
欲しいから買い物に出かけて購入する、
という一般的な消費行動とは少しかけ離れている。

時計は出会い、なんですよね。現地で出会い、その場の勢いで買ったものがほとんど。その分、特殊な思い出が生まれることがあって、例えば、パネライを買ったお話には後日談があるんです。帰路につこうとした矢先にゼネストが起こって税関も突如休みになり、スタンプをもらえず結局税金は戻ってきませんでした。そういうトラブルも国内で普通に購入するときにはないことなので、貴重な旅の記憶のひとつとして刻まれています。

そう気さくに笑いながら、数々の武勇伝を持つ
時計たちにピュリファイタイムを施していく。
メンテナンス自体あまりしないとのことだが、
改めてその必要性を感じたという。
そう気さくに笑いながら、数々の武勇伝を持つ時計たちに
ピュリファイタイムを施していく。
メンテナンス自体あまりしないとのことだが、改めてその必要性を感じたという。

お恥ずかしながら、僕はあまりモノの手入れにマメな方ではなくて。靴はわりかしするけれど、如実にメンテナンスによる差がでるギターなんかはもっときちんとしなきゃいけないくらいです。こういう商売ガラ、時計に関しても人に見せたり、取材対象の時計を拝見したりすることがあります。そういう場合に、ケアはやはりちゃんとされておくべきだと改めて思いました。

ピュリファイタイムに研磨剤が
含まれていないことにも好感を持ったようだ。
ピュリファイタイムに研磨剤が含まれていないことにも好感を持ったようだ。

手入れによって時計を削ってしまうことに抵抗のある人は多いので、そういう成分がないというのは使いやすいですね。僕は、時計のストラップを必ず好みのものに付け替えるんですが、そのときにケース本体の掃除もいっぺんにするんです。これはサラッとした使い心地で、気軽に汚れを落とせそうです。

いつの間にかじっくり掃除を始めた
まつあみ氏に、こういうメンテナンスの
時間を今後も続けられそうか伺った。
いつの間にかじっくり掃除を始めたまつあみ氏に、
こういうメンテナンスの時間を今後も続けられそうか伺った。

手入れの時間は今の時代にこそ続けたいし、勧めたいですね。このところ、時計を購入しても長いこと手元におかず、どんどん新しいものを求める傾向が強まっていると感じています。ロレックス投資とか、そういう行為を否定はしませんが自分としては違和感がありますね。なぜなら、時計は手元に置いておくと自分の過去の時間と改めて向き合えるモノだからです。機械式時計が復興して以来、90年代、ミレニアムを超えてどんどん時計はバブルな方向へと進化してきました。今でこそヴィンテージを見直す風潮も出てきていますが、そんなときだからこそ、手元にある年代ものの時計にゆっくりと手入れをしてみるのもいいと思います。年をとると当然ながら自分の記憶は薄れていきます。ただ僕は、旅先で手に入れた時計を見ていると、その記憶が今でも蘇ってきて、それはまるで時計の針を逆に回しているかのようなのです。時計との付き合い方を豊かにして、過去とつながることができる。時計にゆっくり手入れをする時間によって、そうしたものが得られるとしたら素敵だと思います。

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