愛好家たちの声
#08
やすたけ としひろ
ビームス プレス
やすたけとしひろ・1985年、福岡生まれ札幌育ち。文化服飾学院卒業後、2005年にビームス入社。銀座店、新宿店でのメンズドレス販売を経て2012年よりプレス担当に。現在はメンズPRを統括しつつ、「BEAMS AT HOME」シリーズのディレクションなども手掛ける。
セレクトショップの名物プレスとして、各誌のスナップに引っ張りだこの安武さん。ピッティウオモなど、数多くの海外展示会への出張などを通して磨かれたコーディネートと物選びのセンスは、業界内でも一目置かれる存在だ。時計選びにも独自のこだわりを持つ彼に、物のケアとの距離感を聞いた。
ビームスに入社して銀座店に配属になったのですが、ドレススタイルのお店だったために腕時計の必要性を感じて、2、3年目に先輩の勧めで購入したのがこのロレックスのオイスターロイヤルです。当時はまだスマホも一般的ではなく、勤務中に携帯電話で時間を確認するなんて考えらませんでしたから、そういう意味でも腕時計は必須だったんです。本格的なドレススタイルを提案するお店だったので、それに見合う時計が良いだろうと探してこの1本に出会いましたね。他にもファーバーカステルのペンとか、スーツに合う小物を揃えていったのを覚えています。僕のロレックスに関しては厳密にはドレスウォッチというわけではありませんが、そう見えるサイズ感と見た目、ブランド的にも安心して使えるものという基準で選びました。
僕は手首が細いので、よりフィットするサイズ感を選んだら自然とこうなりました。このオイスターロイヤルは34、5mmくらいだと思いますが、小ぶりなサイズ感が僕にはぴったりで。また、今でも古びない普遍的なデザインというのも理由です。僕の元にきてからも10年以上が経っていますが、今でもすたれずに長く使える1本なのだと実感しています。
当時は革ベルトが付いていましたが、夏場もつけていたら痛んで使用できないほどになったんです。それ以降、ストラップを替えることを覚え、またナイロンベルトがしっくりくる格好をすることも増えたこともあり、こういう合わせにしています。タイドアップする機会も減りましたしね。
これは2年目に、インスタで見つけた新木場の古着屋で買ったものです。マルジェラが手がけていた頃のエルメスの物で、彼のシグネチャーでもあるダブルループストラップがどうしても欲しくて、インスタで見つけた日に購入しました。表面が削ってあるような風合いのあるレザーなのが珍しく、カジュアルな服装にもマッチします。この時計にふわふわしたニット、ミドルからローゲージくらいのものを合わせたくて、主に冬用の時計として使っています。自分としては初めて手にした自動巻きというのも気に入っています。
僕は、毎日時計を必ず着けるわけではありません。ファッションによって合わないときはしませんし、そんなにたくさん所有するわけでもない。だからこそ、汎用性のあるもの、華美なものよりもシンプルなものを選んでいます。あと2、3本もあれば一生分の時計が揃いそうです。妻にプレゼントしたヴィンテージロレックスもあって、たまにシェア使いもしてますしね(笑)。
靴について言えば、かなり手入れをする方だと思います。履く日の朝にささっと磨くんです。こういう手入れは好きな方ですね。ただ、つま先をポリッシュして光らせたりは今はしていません。あれはあくまでフォーマルなスタイルに合うものなので、ジャケパンとか今のリモートスタイルにはマッチしないんです。それは時計も同じで、ビシッとキメたスーツであれば、傷もなくストラップの革の状態も完璧な時計が良いと思います。しかし、今日の僕のようにカジュアルをミックスしていたり、古着を着たりするときなんかは時計がキレイすぎると浮いてしまうんです。清潔感があることは重要ですが、極端にキレイである必要はないんです。
このクリーナーは手触りが変わるくらいで、見た目にそこまで変化があるわけではなさそうですね。靴のクリーナーでもそうですが、そこまで成分が強くないものが気を使わずに使えるんです。特にヴィンテージ時計をケアする場合は、傷も目立たなくなるように磨いてしまうようなものだと、服装に合わなくなるくらいになってしまいそう。靴も強めのポリッシュで磨くとツルツルな質感になり過ぎて、合わせるアイテムが限られてしまうので、このピュリファイタイムのようにプレーンな使い心地でケアできるクリーナーは好印象です。