愛好家たちの声
#04
@Hiroo Kikai
安藤 夏樹
編集者
新卒で出版社に入社後、日経おとなのOFF編集、MOMENTUM編集長を経て、2016年にプレコグ・スタヂオを設立。現在も時計関連の取材、執筆に多く携わる。所有する時計コレクションは150を数える。口癖は「散財王に俺はなる」
一時は200本を超える腕時計をコレクションし、特にヴィンテージウォッチを多く所有する安藤さん。時計業界でも有数の造詣の深さをもつ彼は、時計との付き合い方に対して一家言を展開してくれた。
日常的に使う時計は、時期によって決まってくるので実際には全てを満遍なく着けるというわけではないです。気分に合うものを選んでブームのように使うことがありますが、ずっと使っていなかった時計の場合はできるだけオーバーホールしてから着けるようにしています。僕はヴィンテージを中心に150本ほど所有しているのですが、使わずに放っておいた時計の場合、内部でオイルが固まって歯車に負荷がかかったりということがあるので。所有しているものの中にはまったく使わない時計もありますけどね。製造したブランドも所有していないような時計は、資料的に持っておきたいということもあるもので。
実はお恥ずかしながらそこまで手入れというのはしていなくて…。調子が悪くなったらオーバーホールをする、使ったら裏蓋を拭くくらいのことしかしていないんです。特に、真夏の汗は時計の大敵ですから、使用後はできるだけしっかりと拭くようにしています。
まさにそうですね。最近だと、海外のメディアを見ても時計の傷やエイジングを評価する動きが出始めています。僕が買い始めた頃には、ただの文字盤の日焼けでしかなかったものが“トロピカルダイヤル”と言われるようになったり、色褪せたベゼルを“ゴーストベゼル”と名付けてプラスに評価するようになったりして、それが値段に反映されている。製造技術が進化して、技術的に過去の時計の復刻も完璧にできるようになったからこそ、唯一マネのできない経年変化に価値がつきだしているのだと思います。
これは、僕が独立した2016年に知人のコレクターから購入したヴィンテージのクォーツモデルなんですが、手に入れたときの状態のまま使っています。バフをかけようかなとも思いましたが、傷も味だと考えて。無理な使い方をしてついた傷と違って、使用による自然な傷は、愛着の証でもありますから。今回、このピュリファイタイムを使ってみて、この傷がより良い雰囲気になった気がしますね。
はい、こちらは長年状態の良いものを探していてようやく見つけたパリダイヤル(※注:ダイヤル上にParisの表記がありフランス製を示す文字盤。後年のものはSwiss表記となる)で、ドレスウォッチですから極力キレイに使おうと心掛けているんです。シーンによって時計を使い分けるのはけっこう楽しいものですよ。時計を手に入れたらそれで満足という人もいるし、1本でどんな場面も済ませてしまうという人も多いと思うんですが、それだともったいないんかないかと思います。実際に着けて、その時計に合った使い方をして初めて良さも分かるし、楽しみがあると思うんです。スポーティなステンレスの時計は傷付いてナンボだし、ドレスウォッチはタキシードやスーツに合わせられるほどに、キレイに保てるかが大事になるんじゃないかなと。買う前に色々と調べて、手に入れたら終わりではなくて、その後にどうなるのか観察しながら使って欲しいと思いますね。
そう思います。クリーナーとしての効果もさることながら、時計は触ることで愛着が湧くものだし、特徴が分かるようになるもの。手入れをして接する時間を作れば、自分なりの時計との付き合い方が分かってくると思います。